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科学が進歩していなかった大昔でさえ薬は存在していた

天然物をまねる

今日のように科学が進歩していなかった大昔でさえ、薬は存在していました。植物の種子や葉、動物の肝や角などの生薬がその代表例です。これらは、単一成分からなる現代医薬品とは異なり、雑多な成分の中に含まれる有効成分の働きによって効いています。

したがって、多種成分による複合効果という点で現代の薬にはない良い点もあるのですが、即効性や症状への選択性(切れ味)という点においては劣っている場合があります。

そこで、現代の薬は、生薬の多種成分の中から、対象とする疾患に効いている成分だけを抽出し、それをもとに化学的な修飾(化学合成で構造の一部を変えること)を加えて効果を強くする、あるいは毒性を少なくするようなデザインをされたものがあります。

例を挙げるなら、サリシンから誘導されたアスピリン、コカインから誘導された合成局所麻酔薬、などがそうです。このように天然物から得られる成分は新薬のよい種、すなわちシード化合物になります。

ペニシリンがアオカビの産生する成分から見つけられたことをご存知の方は多いでしょう。これも天然物の一種であり、さまざまな微生物を発酵培養してその産生するエキスを抽出し、そこから有効成分を取り出すというアプローチもよく用いられます。微生物はその生存する環境によって産生する成分が異なるため、いろいろな土地や環境に生息するものを採取し、そこから有効成分を取り出すという努力が行われています。

最近の注目薬の中では免疫抑制剤のタクロリムスがあります。タクロリムスは、筑波山の土から採集された放線菌が産生する物質です。この物質をシード化合物としてその効果を上げるような化学的修飾の研究が盛んに行われましたが、結局この天然物質を上回るものは得られませんでした。

このようなこともあるのですが、それは天然物の中には化学構造が複雑なものもあり、合成可能なデザインの範囲が限られるためかもしれません。しかしながら、天然物は人間の手や頭脳では考えもつかないようなユニークな構造を豊富に持つ、無限の可能性を秘めた薬の種の宝庫といえるでしょう。


新薬創出の新展開
人類は長い間モルヒネ(アヘン)のように天然物をそのまま薬として使用してきました。そして、20世紀初頭になってただ単に病状を改善するという対症療法的な目的ではありましたが、アスピリンのような自然界には存在しない薬を人間の手で創り出しました。

また、作り出した化合物の働きを調べるランダムスクリーニング法も発達しました。そして、20世紀後半には病気の原因となる体のメカニズムを考慮したドラッグデザインという方法を用いて、抗生物質、血圧降下薬、抗潰瘍薬などの画期的な新薬も生み出しました。

これらはいずれの場合も、最初に生物活性を有する天然物あるいは有機合成化合物が発見され、その後に新しい受容体の存在や作用メカニズムが解明されるという一連の研究の流れがありました。21世紀においてもこの種の研究は新薬開発の重要な位置を占めると考えられます。

一方、ヒトゲノムのほぼすべての塩基配列の解読が21世紀初頭に完了したことを受け、このゲノム情報を有効に利用して新薬を開発しようというゲノム創薬研究が始まりました。この革新的な研究によって、これまでの研究の流れとは反対に、ゲノム(DNA) ← RNA ← 酵素・受容体 ← 薬(有機化合物)という新しい研究の流れが誕生し、薬を創るための創薬標的物はこれまで以上にたくさん発見される可能性が出てきました。

しかし今でも、有効で安全な薬を創るには、従来どおり新しい創薬標的物に作用するリード化合物をまず見つけ、それを構造最適化していくという操作が必要であることに変わりはありません。

そのような新薬開発のため、ハイスループットスクリーニング、コンビナトリアルケミストリー、コンピュータ支援医薬品設計等の新技術をさらに改良し、機能的にリンクさせてゆく努力が続けられています。